Episode 02

建築ってこんなもんですよ、能美さん

 そうはいっても、退っ引きならない状況の中では、無駄な支出をとことんゼロにして収入を作らなければならなかった。おまけに2008年に発生したリーマンショックもまた、フィル・カンパニーにダメージを与えていた。
 そんな向かい風の中で能美が発想し、活路となったのが「契約と同時に三分の一が入金される」という新たな事業モデルだ。これが実現すれば、経営はグンと楽になるし、リスクも減る。もちろんながら難点もあった。業界の習わしとして、契約後、工事が始まるよりも先にお金をもらうというのは稀なことだった。

 「いくらなんでも、能美さんだって無理ですよ。業界の契約形態やお金の支払い方には業界の理( ことわり)というものがあるし、契約した時にお金をもらうなんて出来ないに決まっている。常識的に、建築ってそんなもんですよ」

 そんな声が当時の社内にはあった。これには能美もカチンと来たようだ。絶対にそんなはずはない、必ず変えることができるはずだ! 付加価値のあるサービスや商品にならなければ、ベンチャーとしてやっていく意味なんてない。そしてその付加価値は必ず作り出せる。強くそう思った。

 このチャレンジングな取り組みが2010年には現実のものとなり、すぐにフィル・パーク事業の標準形となっていった。
 業界の習わしがどうであろうと、他社がどうであろうと、そして顧客の既成概念がどうであろうと、より良く変えるべきことがあるなら、変えていく。正しいと分かっているのに、取り組みもしないで業界がこうだから無理だと判断するのは絶対に間違っている。どんなことでも、正しいと思ったらやってみる。そんな、能美のベンチャーに対する信念が報われた瞬間でもあった。
 こうして切り開いた新たな事業モデルは、画期的な仕組みとして、その後ずっと事業を支えていくことになる。一歩、また一歩と、フィル・カンパニーのビジネスモデルは現在の形へ近づいていくのであった。

フィル・カンパニーとは何者なのか。
そして、どこへ向かっているのか。
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