Episode01

2つの確信、カタチになり始めたビジネスモデル

 「このままだと間違いなく潰れる」

2009年、フィル・カンパニーは創業から3年が経とうとしていた。5億円に近い巨額の事業資金を調達していたにも関わらず、いまだ明確なビジネスモデルを創り出せずにいた。そもそも、土地を持つオーナーからお金をとるのか、はたまた、フィル・パークに入るテナントからお金を取るのか、フィル・パークを建てるとなっても誰がその費用を負担するのか、そういった事業に関わるお金の流れすら確立できていなかった。事業の付加価値を高め、顧客のニーズに寄り添うことを重んじる能美ではあったが、とは言え問い合わせが増えない。一向に電話も鳴らない。

 倒産へのカウントダウンは始まっていた。能美の逆算では、6ヶ月。

 数は多くなかったが、かかってきた電話は可能な限り自らも受け、営業に駆け回り、問い合わせのあった顧客の話に耳を傾ける。能美を中心としたチームは奔走した。そうしているうちに、もう1つ確信したのだ。

「土地オーナーからの需要は、間違いなくある。自分が持っている土地をどうすれば良いのか、答えが分からなくて大変困っている。我々にできることが、必ずある」

土地活用に悩んでいるオーナーさんたちの需要に対して答えを出せるような、付加価値のある商品・サービスってなんだろう? 日々考え、悩みながら、そういうフィル・パークを矢継ぎ早に企画・開発していった。
 当時のフィル・カンパニーは、付加価値を生み出すこと、顧客のニーズに応えることよりも自分たちのこだわりを優先しているように見えた、そう能美は振り返る。例えば、建築手法だ。「アルミ・リユース建築」という、再利用可能な建築であることにこだわっていた。もちろん、それ自体が問題というわけではない。ただ、アルミは高コストだったし、リユースもそうだった。能美を中心としたチームは、オーナーの悩みや要望に対して真摯に耳を傾けていく「ユーザー・ファースト」を実践していく中で、「自分たちのこだわりに固執するだけでは誰も幸せにならない」ということに気づいていく。こういったことから、例えば「屋上緑化」や「駐車場を内包した建物であること」など、「フィル・パークはこうあるべきなんだ!」という考え方をゼロから見直せるようになったのである。
 SPACE ON DEMAND(需要に応じた空間作り) ≒フィル・パークというサービスを通して導かれる最適解。10センチの美学。通常、建築の世界では追求しないようなミクロな領域にまで踏み込み、少しでも有効なスペースの活用を考え抜く。可能な限りのコストダウンを徹底し、何よりオーナーさんに損をさせない。目指すのは月並みに満足してもらうことではない。期待値を大きく超えて感動してもらうということだ。

 そうこうして、チームはひとつの結論に辿り着く。「圧倒的な投資利回り」、「常識を覆すほどのコストパフォーマンス」だ。結局、フィル・パークを建てるとしても、そこにかかる費用を短期間で回収できる、それを約束する、それらが全て事実だということ。フィル・パークにとっても、オーナーさんにとっても、本当に大切なのはそこだった。

 そして2009年4月、新たなフィル・パークが都内に誕生した。紆余曲折はあったし、決して現在のような良好なプロセスを辿れたわけではない。多くの課題を浮き彫りにしたところもある。建築的に建てられるもの、ユーザー的に使えるもの、そしてコスト的に成立するもの、この3点を交わらせなければフィル・パークは成立させられないということを体感していったのである。

 「このカタチを洗練させていこう」

 フィル・パーク建築のプロトタイプが形作られた瞬間でもあった。

フィル・カンパニーとは何者なのか。
そして、どこへ向かっているのか。
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